遺言Q&A

遺言にはどのような種類がありますか?

遺言には次のような種類のものがあります。

普通方式

特別方式

これらのうち、利用されることが多いのは、自筆証書遺言公正証書遺言です。

自筆証書遺言とは何ですか?

自筆証書遺言とは、遺言者が、遺言書の全文、日付及び氏名を自書し、印を押して作成する遺言書のことです。

自筆証書遺言のメリットは何ですか?

自筆証書遺言のメリットとしては、次のようなものがあります。

自筆証書遺言のデメリットは何ですか?

自筆証書遺言のデメリットとしては、次のようなものがあります。

ただし、自筆証書遺言保管制度を利用することでカバーできるものもあります。

自筆証書遺言保管制度とは何ですか?

自筆証書遺言保管制度とは、作成した自筆証書遺言の原本を法務局に保管してもらう制度です。

自筆証書遺言保管制度のメリットは何ですか?

自筆証書遺言保管制度には次のようなメリットがあります。

自筆証書遺言の日付を「7月吉日」といった記載にしてもよいですか?

自筆証書遺言の日付は客観的に年月日を特定できるようにしなければなりません。

そのため、「7月吉日」のような記載をすると遺言は無効となります。

自筆証書遺言をパソコンで作成することはできますか?

自筆証書遺言は、自書で作成しなければならないため、パソコンで作成することはできません。

ただし、相続財産の目録については自書せずにパソコンで作成することなども可能です。

この場合、目録の各頁(両面の場合は両面)に署名・押印が必要となります。

自筆証書遺言の押印は「指印」でもよいのですか?

自筆証書遺言の押印は「指印」でもよいとされています。

ただし、遺言者本人の指印であるかどうかを確認することが困難であるため、確認のしやすい実印で押印するのがよいでしょう。

検認とは何ですか?

検認とは、遺言書の状態を確認し、証拠を保全する手続のことです。

自筆証書遺言の場合、原則として、検認が必要となりますが、公正証書遺言の場合、検認は不要です。

遺言者が亡くなった場合、遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺言書の検認の申立てをする必要があります。

検認期日では、裁判官が遺言書の状態を調査した上、遺言書の写しが添付された検認調書が作成されます。

検認が終わったら、検認済証が付された遺言書が返還されます。

なお、検認を受けたからといって、その遺言が有効であることが確定されるわけではありません。

遺言書が封筒に入っている場合、開封してもよいですか?

民法では、「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない」とされており、これに違反した場合、5万円以下の過料に処するとされています。

「封印」とは、封に印が押されていることを意味するため、封入されているだけで印が押されていなければ、「封印」には該当しません。

もっとも、封に印が押されていない場合であっても、遺言書の偽造などを疑われないように、勝手に開封せず検認を申し立てた方がよいと思われます。

公正証書遺言とは何ですか?

公正証書遺言とは、公正証書で作成される遺言のことです。

公正証書とは、公証人がその権限に基づいて作成する公文書のことです。

公正証書遺言のメリットは何ですか?

公正証書遺言のメリットとしては、次のようなものがあります。

公正証書遺言のデメリットは何ですか?

公正証書遺言のデメリットとしては、次のようなものがあります。

2人で同じ書面に遺言をすることはできますか?

2人以上の人が同一の書面で遺言をすることはできません。

これを「共同遺言の禁止」といいます。

共同遺言が禁止されるのは、遺言の自由や撤回の自由を制約するおそれがあるためです。

未成年者でも遺言をすることができますか?

未成年者であっても、15歳以上であれば遺言をすることができます。

遺言能力とは何ですか?

遺言能力とは、有効に遺言をする能力のことであり、「遺言事項を具体的に決定し、その効果を理解するのに必要な能力」などと定義されます。

遺言時に遺言能力がない場合、当該遺言は無効となります。

遺言能力の有無はどのように判断されますか?

遺言能力の有無は、遺言時を基準にして、遺言者の病状、精神状態等、遺言の内容、遺言をするに至った経緯等を踏まえて判断されます。

その判断にあたっては医学的要素が尊重されますが、最終的には裁判所が法的な判断を下すことになります。

以上のように、遺言能力の有無は、遺言者の病状、精神状態等の医学的要素のみから判断されるのではなく、遺言の内容や遺言をするに至った経緯等あらゆる事実を総合的に考慮して法的な観点から判断されます。

遺言能力の有無を判断するための資料(証拠)にはどのようなものがありますか?

遺言能力の有無を判断するための資料(証拠)として、たとえば次のようなものがあります。

遺言者の病状、精神状態等に関する資料

遺言の内容や遺言をするに至った経緯等に関する資料

認知症であっても遺言をすることができますか?

有効に遺言をするためには遺言能力が必要です。

遺言能力の有無は、医学的要素だけでなく、遺言の内容や遺言をするに至った経緯等あらゆる事実を総合的に考慮して法的に判断されるものであるため、認知症であるというだけで遺言能力が否定されるわけではありません。

認知症の人であっても、有効に遺言をすることができる場合があります。

ただし、後に遺言能力の有無をめぐってトラブルになる可能性があるため、医師に長谷川簡易知能評価スケール(HDS-R)等の検査してもらったり、診断書を作成してもらったりといった事前の対策を検討するとよいでしょう。

遺言の無効を確認したい場合、どのような手続となりますか?

「家庭に関する事件」については、原則として、訴訟を提起する前に調停を申し立てなければなりません。

これを「調停前置主義」といいます。

遺言の無効を確認する事件(遺言無効確認請求事件)も「家庭に関する事件」であるため、まずは家庭裁判所に調停を申し立てるのが原則です。

ただし、相手方が話し合いを強く拒絶しているなど調停が成立する見込みが薄い場合には、調停を申し立てることなく訴訟を提起することが許されるケースもあります。

この場合には、調停を申し立てることなく訴訟を提起するに至った事情を裁判所に説明することとなります。